【釈正輪メルマガ7月2日号】日々是好日

【愚痴】
 
 暑中お見舞い申し上げます。
 
 本格的な暑さが到来する前の時節を「小暑」といいます。昔は小暑を迎える時期は、梅雨明けが近いといわれていましたが、近年は梅雨明けが随分と遅くなりました。また梅雨独特のしとしと雨ではなく、集中豪雨も多い異常な気象になってきていることを危惧します。
 
 さて七月に入ると、「暑気払い」の行事が彼方此方で目白押し。暑気払いとは、その名のとおり「暑さを打ち払う」ために、様々な方法を講ずることをいいます。「暑気」というように、暑さや体に滞る熱を取り除くだけでなく、弱ったエネルギー(気)を回復させて、元気になろうというわけです。
 
 現在では暑さにかこつけて、夏の宴会を指す言葉にもなっていますが、それも理に適っているといえます。日本では古くから、旬の食材を採ることで体調を整えてきましたが、宴会に欠かせないビールの麦は、六月から七月にかけて収穫される夏の食材。体を冷やし、利尿作用で不要なものを体から出してくれます。
 
 他にも伝統的な暑気払いは、意外にも「甘酒」です。甘酒といえば、寒い冬に身体を温めてくれる飲み物と思われがちですが、季語は夏なんですよ。
 
          合掌
 
鱧を焼く 匂ひも錦 小路かな
 
          木内怜子
 
 お釈迦さまは、人間とは百八の煩悩の塊であると言っております。中でも、特に私たちを煩わせ悩ませるものが、貪欲(とんよく)・瞋恚(しんい)・愚痴の三つです。限りない欲望(貪欲)が妨げられた時にでるのが瞋恚で、妬み嫉み恨みが愚痴となります。よく「愚痴をこぼす」と言いますが、元は仏教の言葉です。「愚」はおろか、「痴」は知恵が無い馬鹿ということです。愚かで馬鹿な心とは、『因果の道理』を分からず、他人の幸せを妬んだりする心です。勝るを妬む愚痴の心は、反対に他人の不幸を喜ぶ心です。毒舌家のA・ビアスは、「幸福とは他人の不幸を見て喜ぶ快感」と『悪魔の辞典』に書いています。
 
 このような光景を見かけました。帰宅ラッシュ時の電車に乗り込もうと、一生懸命に走ってきた女性の前でドアが閉まってしまい、女性は額をぶつけてしまったのです。その時、車内にいた中年の男性と、若い男性がクスッとほくそ笑んだのです。「他人の不幸は蜜の味」と言いますが、人間の実に情けない心です。妬み嫉みのいやらしさは、見ただけでゾッとします。出世したとか結婚したとか新築したとか等の、他人の幸せはみんなしゃくのタネなのです。逆に失敗したとか離婚したとか等の他人の不幸を聞くと、心の中はニヤリとする。仮に、思っていることを洗いざらい曝け出したらどうでしょうか。お前は悪魔だと叫ばれ、皆んな逃げ出すのではないでしょうか。
 
 本当の幸せになるには、このような自己の姿を、よくよく知ることが大事だと、仏教では教えています。

悪性(あくしょう)さらにやめがたし
こころは蛇蝎(じゃかつ)のごとくなり
 
          親鸞
 
          釈 正輪 拜

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