心が汚れている者は醜い

二十四節気では、今の時節を「寒露」といい、秋の深まりを感じる頃なのですが、日中の真夏日は異常な出来事です。日本の四季はもう無くなってしまったのでしょうか。
 
 さて、「雁渡し」という旬の兆しを表した言葉があります。晩秋、雁が海を越えて渡ってくるころに吹く北風のことを雁渡し、また青北風とも呼ばれています。灰がかかった曇り空と、冷たい北の海の間を、渡り鳥が群れをなして飛んでくる姿には、自然を生き抜く力強さを感じます。
 
          合掌
 
草木より 人翻る 雁渡し
 
          岸田稚魚
 
 昨年、流行語大賞となった「インスタ映え」は、インターネットのSNSでの見栄え重視の風潮から生まれた言葉です。一般には、「第一印象が大事」とか、「人は見た目が九割」などといわれます。容姿や身なりは確かに大事ですが、それは中身や内容を、よりよく知ってもらうためでしょう。 
 人でもモノでも、軽薄なら、たとえ一時は注目されても、すぐに飽きられてしまうものです。大切なのは中身。心を磨くことです。その大切さを教えたお釈迦さまの、こんなエピソードを紹介しましょう。
 
 インドの有名な祇園精舎の建立者、給孤独長者(ぎっこどくちょうじゃ)が、一人息子に嫁を迎えました。女性は見た目が第一と、長者が選んだ女性は、世にも美しい姫なので玉耶(ぎょくや)といわれました。
 
 ところが玉耶姫、あまりの 美貌に自惚れて、嫁いでやったの意識が強く、夫や両親の言うことに全く聞く耳を持ちません。家族のために働くこともなく、一日中、鏡の前に座ってばかり、困り果てた長者は、「何とか嫁の心掛けがよくなるようなお諭しを」と、お釈迦さまに縋りました。深く同情されたお釈迦さまは、早速早朝、大勢の弟子を連れて長者の屋敷へ赴かれました。
 
 ところが、長者の家人が一同で恭しく出迎えるも、当の玉耶だけはへそを曲げて、奥の部屋に身を潜めて出てこようとしません。一切をお見通しのお釈迦さまは、神通力で、長者の屋敷の全てを透き通るガラスの家に変えてしまいました。驚いたのは玉耶姫。奥の部屋の押入れの中なら分かるまいと思っていたのに、双方からありありと見えては、もはや隠れてはおれません。
 
 自ら飛び出し、ひざまずいた玉耶に、「玉耶姫よ。いかほど顔や姿が美しくとも、心が汚れている者は、醜いものである。黒い髪もやがては白くなり、真珠のような白い歯も段々と抜け落ち、顔にはシワができ、手足は次第に不自由になっていくものだ。それだけではない。一度無常の風に誘われれば、二度と見られぬ哀れな姿に変わり果てるのだ。そのような肉身に何の誇りが持てようか。それよりも心の美しい女になって、誰からも慕われることこそが大切だとは思わぬか。」
 
 優しく諭されたお釈迦さまは、玉耶に七通りの婦人を示されたのです。〈つづく〉
 
          釈 正輪 拜

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