日々是好日(200)
【釈正輪メルマガ1月6日号】日々是好日
(2015/1/6配信)
【有無同然】
陽春の候。謹んで新年のお慶びとともに、皆様におかれましては今年も恙無き1年でありますよう祈念申し上げます。
合掌
現代の私たちはあれもこれもあり、少し努力すれば何でも手に入ります。しかしそれでいて心は満たされず、いつも寂しさの喪失感がただようのは何故でしょうか。
私たちに足りないのは幸福の材料ではないと、お釈迦さまは教えられています。
マガダ国の王・ビンバシャラと韋提希(イダイケ)夫人はある日、重臣たちから釈迦の噂を耳にします。
「数あるさとりの中でも、最高の仏というさとりを開かれた方。いろいろな苦しみも解決してくださると、専らの評判でございます。」
王様夫婦として何もかも恵まれながら、阿闍世(アジャセ)という親不孝な子供を持ち、お先真っ暗な地獄で苦しんでいた二人に、お釈迦さまの教えを一度聞いてみたい、という心が芽生えました。法話会場に到着した王夫妻は、象に乗ったまま最後列に陣取る。庶民も金持ちも老若男女入り交じった聴衆たち。登壇された釈尊(お釈迦さま)の尊い姿を一目見て、王夫妻は心打たれました。やがて静かに説法が始まりました。
「人々よ。心の頭を垂れて、わが言葉を聞くがよい。人は苦をいとい幸せを求めている。だが、金を得ても財を築いても、常に苦しみ悩んでいる。王や貴族とて皆同じである。」
静まり返った竹林に、釈尊の言の葉がしみ通っていきます。
「それは何故か。苦しみの原因を正しく知らないからである。金や名誉で苦しみはなくならぬ。無ければ、無いで苦しみ、有れば有るで苦しむ。有無同然である。毎日を不安に過ごしている。例えば、子供のない時はないことで苦しみ子供を欲しがる。しかしあればあったで、その子のために苦しむ。」
ギクリとする王と韋提希夫人。
「この苦しみの原因はどこにあるのか。それは己の暗い心にある。熱病のものはどんな山海の珍味も味わえないように、暗い心の人は、どんな幸福も味わえないのだ。」
二人の心に衝撃が走る。
「心の闇を解決し、苦しみから脱するには、ただ仏法を聞くよりない。この法を求めよ。心の闇が破れ、真の幸福が獲られるまで。たとえ大宇宙が火の海原になろうとも…」
説法が終るや否や、ビンバシャラ王と韋提希夫人は象から降り、お釈迦さまの前へ歩み出て、恭しく合掌礼拝をしました。以後深く仏法に帰依し、真実の教えを聞くようになりました。
苦しみの原因は私たちの暗い心にあります。心の暗い人はどんな幸福も味わえないのです。
今年は蒙を啓き真実の人生を仏法から学んでみませんか。
平成二十七年(2015年)吉日
釈 正輪 九拜
Source: 釈正輪メールマガジン