挨拶(2016年3月29日)

つぼみかたし、つぼみふくらむ。いよいよ桜が花盛を迎え、春爛漫のころとなりました。古より日本人に深く愛されてきた桜ですが、三月下旬から四月半ば頃に花を咲かせることから、卒業や入学など、人生の転機を彩る花の代名詞にもなっています。

平安時代末の歌人西行法師は、桜をこよなく愛し、吉野に草庵を結んだほどでした。その西行は、満開の桜の下で死ぬことを願い、そして往生を遂げたのです。西行忌である如月の望月(満月)は、新暦でいえば三月下旬から四月上旬まで。まさに桜の満開の時期にあたります。西行の歌は、はからずも旧暦と新暦を照合する好例となっています。

合掌

願はくは 花の下にて 春死なむ
そのきさらぎの 望月のころ

西行

私が居住するマンションには、たくさんの子どもたちが住んでいます。朝夕にその子どもたちに挨拶をすると、必ず元気に返事が返ってきます。「おはよう」と言えば、「おはようございます」と頭を下げ、「こんばんは」と言えば、「こんばんは」と元気に応えてくれます。

ところが大人たちと言えば、私は挨拶をしても、下を向いて小声で応答するか無視をする。また相手から先の挨拶はありません。大人たちの元気のなさと無礼さにはほとほと落胆いたします。

そういえば、このような話しを聞いたことがあります。コメディアンの萩本欽一さんが、かつて劇場の研究生として入団した当時、演出家から、才能がないからやめたほうがいいと言われ、芸人の道を断念しかけたそうですが、先輩芸人が、演出家にこう言ってくれたそうです。「確かに萩本には才能がないかもしれない。でも彼ほどいい返事をする若者はいない。あいつのハイは気持ちがいいから、ハイだけで置いてやってくれないか」と。後からその話を聞いた萩本欽一は奮起し、努力を重ねて今日の立場を築いたといいます。

男性の気持ちよい返事は清々しさを感じます。女性の笑顔は何よりも美しく魅せますが、返事がよければ一段と輝きます。「べっぴんも笑顔忘れりゃ五割引き」ですが、返事よければ十割増しとなりましょう。

仲良くなるには、相手をよく理解することが大切ですが、そのためのコミュニケーションは、いい挨拶や返事から始まります。ハキハキした返事は、「私はあなたを無視しません」という意思表示であり、要望や指示に対して、「あなたの要望に応えるように努力します」という気持ちの表明です。いい返事がないと相手は、「もしかして嫌われてる?」「感じ悪いなぁ」と気を揉むことになりかねません。

たとえ気分が乗らない時も、快活な返事が自分自身を元気にし、周囲も明るくしますから、常に心がけたいものです。

仏教では、誰でもできる幸せの種まきを「六度万行」と教えています。その最初に「布施」がありますが、相手を思いやっての、物やお金、笑顔や挨拶返事などの施しの功徳は、必ず施した本人に返ってきます。これを「自利利他」の行といわれています。

釈 正輪 拜

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

開催時の様子を動画で紹介

2019年1月16日「価値観の多様性」

2019年1月16日「改めて思う仏教の大切さ」

2019年1月16日「人というのは何者なのか?」

2018年8月9日「私という人間を認めてくださる方に出会うか否か」

2018年8月9日「お坊さんの役割」

2018年8月9日「歴史にはいろんな考え方がある」

アクセス

  • 11今日の訪問者数:
  • 26昨日の訪問者数:
  • 570月別訪問者数: