永久の未完成(2016年2月2日)

明日三日は「節分」です。このころになると、当寺院の東庭には、淡黄色に「蝋梅(ろうばい)が咲き誇ります。節分が過ぎるといよいよ「立春」。今宵のうえでは春ですが、実際には寒さが厳しい頃でもあります。

昔から季節の変わり目には悪鬼が出てくるといわれ、豆が「魔滅」の音に通じることから、「鬼は外、福は内」の掛け声で豆をまきをする慣わしが始まりだとか。

合掌

節分や 鬼も医師も 草の戸に

高浜虚子

ところで今年は、宮沢賢治生誕百二十年にあたります。NHKカルチャーラジオ講座でも放送されたり、民放でも取り上げられています。私も宮沢賢治をこよなく愛する一人で、このメルマガでも何かと引用させて頂いています。

さて宮沢賢治の代表作の一つに『銀河鉄道の夜』があります。皆さんもよくご存知の童話作品ですね。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語です。この銀河鉄道列車は、生と死の境を走り、やがて天上の世界へと進んでいく、上り一本の列車です。この路程の中に、あの世の仕組みの全てが出てきます。これは仏教の根本道理「輪廻」の理(ことわり)で、来世ではこの世(現世)で行なった自分の行為の結果によって、逝くべき処に行く「因果応報」を具現化しているものです。

賢治は様々な描写を用いて、自身彷徨(迷い)しながらも、その理を表わさんと懸命です。そうです。向こう(死後)の世界は階層の世界です。銀河鉄道は、この階層世界を走る片道切符だけの列車なのです。銀河鉄道に登場する人物は、ジョバンニ以外全てが亡者です。物語のクライマックスは、束の間の幻想的な旅を共にしてきたジョバンニとカムパネルラに、永遠の別れがおとずれる瞬間がきます。

幾度となく伏線はあるのですが、それがこの物語の意図するところで最も重要な場面です。彼岸の世界へと行ってしまったカムパネルラ。一方、此岸の日常世界に戻ったジョバンニを待ち受けていたのはこの世の苦悲。知らされたのは川に流された友人・ザネリを助けようとしたカムパネルラが、流されて亡くなったという哀しい現実でした。

愛するものを永遠に失った哀しみは、ジョバンニだけに起こるのではなく、私たちも必ず体験することです。ジョバンニの声にならない慟哭は、賢治の魂の叫びであるのと同時に、人類全ての心の叫びでもあるのです。

僅か三十七歳で亡くなった賢治は、生涯をかけて、「本当の幸い」を探していました。

愛する者との死別をどのように乗り越えるのか、ほんとうの神様はいるのだろうか、皆んなの幸せはあり得るのだろうか、そしてほんとうの幸いとは何なのかを、生涯かけて探求した賢治は求道の人でありました。

「銀河鉄道の夜」は賢治の「信仰と信念」をまさしく物語として表現したものです。賢治は言います。道は迷い続けてよいのだと。

永久の未完成これ完成である

宮沢賢治

釈 正輪 九拜

開催時の様子を動画で紹介

2019年1月16日「価値観の多様性」

2019年1月16日「改めて思う仏教の大切さ」

2019年1月16日「人というのは何者なのか?」

2018年8月9日「私という人間を認めてくださる方に出会うか否か」

2018年8月9日「お坊さんの役割」

2018年8月9日「歴史にはいろんな考え方がある」

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